再現可能な自分なりの方程式を作る
映画プロデューサーの川村元気氏と理系人たちとの対談集『理系に学ぶ』を読みました。
映画『モテキ』や『告白』、『君の名は。』などの作品を手掛けた売れっ子プロデューサーの川村氏ですが、学生の頃から数学や物理が苦手で、理系コンプレックスを抱えていたそうです。しかし、スティーブ・ジョブス、ビル・ゲイツ、マーク・ザッカーバーグなど、いま世界を変えているのが理系人だと気づき、「理系を学ぶ」ことから逃げてはいけないと思ったのが、この対談のきっかけなのだとか。
実は、私も子どもの頃はエンジニア志望で理系に進むつもりでしたが、高2の時に数学で落ちこぼれ、高3で文系に転じました。ですから、理系人に対してはある種の憧れを抱いています。
川村氏の対談相手は、解剖学者で作家の養老孟司氏、ニコニコ動画の生みの親・川上量生氏、世界最高峰の理系頭脳が集まるMITメディアラボで日本人初の所長となった伊藤穰一氏など、いずれもその道のトップばかり。
私が特に面白く読んだのは、東京藝術大学大学院映像研究科教授の佐藤雅彦氏との対談です。電通CMプランナー時代には『ポリンキー』『ばざーるでごさーる』等のヒットCMを作り、独立後には、ゲーム『I・Q』、Eテレ『ピタゴラスイッチ』など、印象的な仕事を数多く手掛けている佐藤氏。私が尊敬するクリエイターの一人です。
佐藤氏の作品はどれも感性を尖らせて作ったように思っていましたが、実はそうではなく、自分の中でルール化しているそうです。その一つが「要素還元」。すべてのものに対して、それがどんな要素で成り立っているか還元(=言語化)して考えることで、そこに一定のルールを見つけるという手法です。
ただし、ルールを基に作ると、尖ったものは作れるが、メジャーにはなりにくいということも分かったそうです。そこで「トーン(=世界観)」を基に作るという手法も生まれました。『I・Q』は私も以前プレイしたことがありますが、まさに世界観に重きを置いたゲームでした。
佐藤氏いわく「センスや勘に頼るのではなく、手法として確立され、再現が可能な方程式を作ることが大事」とのこと。私も文系なりの頭で方程式を組んでみようと思います。
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