このコーナーでは、株式会社ラクパのライター・城戸あづさが、心に留めておきたい言葉とのエピソードを綴ります。
「人間の最上の徳は、人に対して上機嫌で接すること。」
田辺聖子
先日、お客様と打合せ中の余談で、マウントの話になりました。マウントって、今では誰もが知る言葉ですが、もとはサル山のサルが自分の優位性を周囲に示す、マウンティングという動物行動学の用語から派生したのだそうです。
「あの人、すぐマウント取りたがるよね」というフレーズが流行った時は、自慢ばかりする、いけ好かない人を批判するのに重宝な言葉が生まれたな、と思ったものです。
しかし、言葉がみるみる繁殖し、全ての会話に卵を産み付けていくと、今度は不安に感じるようになりました。
会話中に「私、今マウント取ってないよね?」と自問するようになったのです。より充実した企画にしたくて発した言葉が、お客様に威圧的に捉えられていないだろうか、と気になるのです。
マウント合戦を嫌うあまりに患ったマウント恐怖症。これでは会話も成り立たんと、自分に辟易してきた頃、田辺聖子さんの言葉に出会いました。
徳とは「自らを高め、他を感化する精神的能力」とか。前述の余談でも「何を言われても、素直に聞ける相手っていますよね」って結論に至ったのだけど、まさにそれですね。
上機嫌で人に接するって、意外と勇気が要るものです。でも、この歳からならできるかも、と思ったりもして。マウントに怯えるサル山から脱出すべく、上機嫌を心がける今日この頃です。(あづさ)
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