本質を押さえた革新的アイデアで乗り越える
毎月1日、地元の氏神様に朔日参りをしています。お賽銭を納めることは私にとって習慣になっているのですが、実は神社やお寺では、お賽銭として集まった硬貨の扱いに苦慮しているそうです。
それは、ゆうちょ銀行をはじめとする多くの金融機関で、硬貨で入金すると手数料がかかるようになったからです。そんな折、あるお寺の斬新な取り組みが話題になっています。
名古屋市にある亀岳林万松寺(きがくりん ばんしょうじ)は今年3月、オリジナルコイン「Banshoji Coin」の自動販売機を導入したそうです。コインには、本尊の十一面観世音菩薩が描かれており、1枚500円。お土産としてだけでなく、賽銭や施設内通貨としても使用可。説明書は日本語、英語、中国語の3か国語で記載されているとのことです。
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私はこのニュースを見た時、「小銭対策」のことしか思い浮かびませんでしたが、実はこれまでの複数の課題を一気に解決できる方法だったのです。
一番の特徴は「お賽銭は神仏への祈願を小銭に託す行為である」という本質を外していないこと。今の時代、インターネット上でオンライン参拝できる神社仏閣がありますが、それだと賽銭箱に小銭を納めるという行為ができません。この物理的な行為があるかないかで、お参りした感覚が違ってくるのではないでしょうか。
そして次に、キャッシュレス対応の自販機であること。これだと硬貨が溜まることがないので、金融機関で両替する必要がありません。そして住職を悩ませていた賽銭泥棒もいなくなったとのこと。現金が入っていないのですから、狙っても仕方ないですよね。
さらに、インバウンド対策として3ヵ国語で説明書を書いているのもポイントです。外国人がお土産としてコインを買っていく様子が目に浮かびます。キャッシュレス決済ですから、外国人にも買いやすそうです。
記事中の住職の言葉が印象的でした。「批判はあると重々覚悟のうえ、確実なものを一つ一つ起案し、実施していくということが、これからのお寺に求められていることだと私は感じています。」
旧態依然のままでは、生き残るのが難しい昨今。このお寺のように、本質を押さえたうえでの革新的なアイデアで乗り越えていきたいですね。(正一郎)
※亀岳林 万松寺のサイトはこちら
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