ビジネス書を読んでいると、「鳥の目、虫の目、魚の目」という言葉が時々出てきます。物事を捉える際の視点・視座のことです。
- 鳥の目は、物事を俯瞰して見ること。
- 虫の目は、細部に集中して見ること。
- 魚の目は、潮流から未来を見ること。
- 最近では、これに「コウモリの目:逆さまになって固定観念に縛られずに見ること」が加わることもあります。
最近起こったイスラエルとハマスの武力衝突を例に上げてみます。虫の目で見ると、テロ行為を行なっているハマスには確かに非があります。しかし鳥の目でみるなら、そもそもイスラエル建国自体に問題があったのではという視点が出てきます。歴史について考える時は、鳥の目の視点は欠かせないと思います。
その点で、今回紹介する『日本思想史マトリックス』はまさに鳥の目を使って日本の思想の歴史を俯瞰することができる本です。著者の茂木誠氏は、駿台予備学校世界史科講師で、YouTube「もぎせかチャンネル」は登録者15万人の人気チャンネルになっています。
本書では、古代から現代までの「日本人のものの考え方」のルーツを俯瞰します。その過程で、時代ごとに影響を与えた思想を「マトリックス」で図解・整理しているのですが、これがあることで、視覚的にもとても分かりやすいです。日本人の思考様式・行動原理・アイデンティティがどのように醸成されてきたのか? 460ページもありますが、一気に読めると思います。
- 第1章 神話で読み解く「古代の世界観」(縄文〜古墳)
- 第2章 神仏習合に見る「相手を否定しない文化」(飛鳥奈良〜平安)
- 第3章 「モンゴルショック」による多様性の危機(鎌倉〜戦国)
- 第4章 日本思想における「朱子学と陽明学」(江戸初期〜後期)
- 第5章 日本のルネサンス「国学」(江戸初期〜幕末)
- 第6章 「日本国民」の意識の芽生え(幕末〜明治初期)
- 第7章 格差と社会主義の萌芽(大正〜昭和初期)
- 第8章 敗戦への道を進んだ日本型ファシズム(昭和初期〜終戦)
- 第9章 「敗戦後日本人」の現在地(敗戦〜現代)
この本の章立てを上に記載しました。タイトルを見るだけで、どの章にも興味が湧いてきませんか? 私は特に第2章の神仏習合の話が面白かったです。6世紀に大陸から仏教が伝来した時に、日本の古来の神道とどうやって融合していったかについて、非常に興味深く読むことができました。
『「日本人とは何か」がわかる 日本思想史マトリックス』茂木誠著/PHP研究所/1,900円+税/2023年9月16日発行
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