今、経営に必要な「美意識」とは?
「日本の企業は効率性、生産性が低いから諸外国との競争に勝てないんだ」…こうした話題は新聞やテレビでよく取り上げられます。何度も触れているうちに「生産性が低いことが諸悪の根源」と意識付けられているかのようです。
日本の企業、特に9割以上を占める中小企業がもっと生産性を上げさえすれば、グローバル企業と互角にわたりあえるーそんなイメージを持っている方も多いことでしょう。私もそう思っていました。
ところが、どうやらグローバル企業はもっと先に進んでいるようです。
イギリスにあるロイヤルカレッジオブアートは、修士号・博士号を授与できる世界で唯一の美術系大学院大学で、この大学で最近人気なのが「企業のエグゼクティブ向けトレーニング」です。伝統的なビジネススクールへのMBA出願数が年々減少傾向にあるなか、多くのグローバル企業がこうした大学などの美術系コースに幹部を送り込み始めているのだとか。
ビジネスとアートは一見不釣り合いな感じがしますが、実はそこには現代社会におけるビジネスの新価値が含まれています。今回紹介する山口周著『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』には、その理由が詳しく書かれています。
山口氏は「これまでのような、分析・論理・理性に軸足をおいた経営では、今日のように複雑で不安な世界においてビジネスの舵取りをすることができない」と述べ、その理由を3つ説明しています。
理由1
多くの人が論理的・理性的な情報処理スキルを身に付けた結果、同じ答えにたどり着き、差別化ができなくなっている。また今日の世界はそのような手法で判断できないほど複雑化している。
理由2
全地球規模での経済成長が進展しつつあり、世界中の市場が「自己実現的な消費」に向かっている。そのような市場では理性よりも感性に訴えるもののほうが求められる。
理由3
システムの変化に法整備が追いついておらず、そのような社会では、明文化されたルールよりも、「真・善・美」を判断するための美意識が求められる。
読んでいて「なるほど!」と腑に落ちることばかり。著者のいう美意識とは、単なる美術的な面だけでなく、価値観、道徳観も含めた広い意味のようです。ぜひご一読ください。(正)
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