新しい風を感じた東京五輪
東京オリンピックが終わりました。いろんな問題を抱えた大会でしたが、終わってみれば、各選手の笑顔や涙が印象に残りました。
私が一番心に刺さったのはスケードボード・パーク女子に出場した岡本碧優(おかもと みすぐ)選手です。
「パーク」はお椀状のデコボコがあるコースを45秒間自由に滑り、技を競う競技です。3回チャレンジし、その中で最も高い得点が採用されます。途中で転倒すると競技中止になるため、45秒間を滑り切るなかで、いかに多くの技を組み込むかが勝負となります。予選をトップで通過した岡本選手は、決勝で難易度の高い技に挑戦したものの、ミスを連発。2本が終わった時点で4位でした。しかし彼女は3本目でも攻めの姿勢を崩さず、大技に挑んだのですが、惜しくも転倒。メダルを逃してしまいました。
私がグッときたのは、この後です。肩を落とす岡本選手に海外選手たちが駆け寄り、彼女を抱えあげ、その健闘をたたえたのでした。そこにはメダルも国境もありませんでした。はにかみながら、少しだけ見せた岡本選手の笑顔は忘れられません。
ある新聞にこういう記事がありました。
「6年前、スケートボードが東京五輪追加種目候補になった会見に、堀米雄斗と瀬尻稜(注 参照)が並んだ。「好きな選手は?」という記者の質問に「ナイジャ・ヒューストン」。記者がどこの選手ですか?」と聞くと、2人は顔を見合わせて「知りません」。それがスケートボードの常識なのだ。スケートボードに順位はない。より上位を目指すのがスポーツだが、スケーターにその意識は薄い。もちろん、結果としての金メダルは求めても、最終目標ではない。(中略)。岡本は「目標は金メダルではなく、自分のルーティンをすることでした」。だから仲間たちは挑戦をたたえた」
注)堀米雄斗はスケートボード男子ストリートで金メダルを獲得。瀬尻稜はプロスケートボード選手で今回は「ゴン攻め」「ビッタビタ」など独特の解説で話題。
スケートボードをはじめ、サーフィン、BMXといった若い世代のスポーツには、もはや国を背負ってオリンピックに出るという意識はあまりないのかもしれません。
開会式には、ジョン・レノンの「イマジン」が使われました。その歌詞が意味するものと同じように、オリンピックは本来、平和の祭典を目指していたはずです。その意義を改めて問うことを、若い世代から教えられました。
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