対話の質を向上させるコーチングの技術
ニュースレター作成の仕事は、取材・執筆・デザインの3要素で成り立っていますが、なかでも「取材」のウエイトは大きく、特に「相手にどんな質問を投げかけるか」は、ニュースレターの出来を左右するといっても良いほどです。ですから、対話によって相手の可能性を引き出す「コーチング」には以前から興味がありました。 また、コーチングは目標達成を支援するコミュニケーションスキルなので、スタッフの成長や組織の関係性向上を願う経営者にとっても役立つスキルだと言えます。
先月発売になったヘスン・ムーン著『未来を変えるコーチング』は、私のようにコーチングを学んだことがない人にもそのエッセンスが学べる良書です。
著者のヘスン・ムーン博士は、コミュニケーション科学・教育学の専門家。トロント大学でブリーフコーチング法を教えながら、10年以上にわたって対話型コーチングの働きの研究を行なってきました。
本書は、著者が蓄積した研究成果を豊富な事例とともに分かりやすい言葉で紹介しています。
全26章の各章に「目指す先の指標ではなく、すでに積み重ねた努力に注目しよう」「相手のロジックを尊重しつつ、別の解釈や行動もさりげなく提案しよう」といったテーマが設定してあります。そして全ての章に彼女自身が体験した印象深いエピソードが添えられています。
彼女は「良い対話は人に居場所を作り、癒やしを与えてくれる」と言います。それを実現するためのツールとしてリスニング・コンパスという概念を作りました。話し手が第3・第4象限に囚われていたら、第1・第2象限へと導くようにします。聞く側がコンパスを持ち、相手がどんな未来を構築できるかを考えながら、前進することを前提に対話をすること、そのためにどんな質問を投げかけるのかを具体的に学べる一冊です。(正一郎)
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