このコーナーでは、株式会社ラクパのライター・城戸あづさが、心に留めておきたい言葉とのエピソードを綴ります。
「風邪を引いた原因はわからなくても、風邪が治ればいいもんね。」
友人への言葉
数年前のこと、私の10年来の友人に試練が訪れました。京都で暮らしていた息子さんが心身を病んでしまったのです。彼女から「しばらく京都で息子をケアする」と連絡を受けた時は、その決断を応援しながらも、彼女の心労を案じました。
数カ月が経ち、彼女から無事に帰ってきたと連絡がありました。夏が近づいたある日、公園のカフェで私は彼女の話を聞きました。途中、何度も目頭が熱くなり、同じ母親として彼女の努力に頭が下がる思いでした。
別れ際に私は彼女にもう一度、労いの言葉をかけました。すると彼女がポツリと「でもね、どうしてこんなことになったのか。それはわからずじまいなのよ」と。私は思わず「風邪を引いた原因はわからなくても、風邪が治ればいいもんね」と口にしました。その瞬間、彼女の顔がパッと明るくなったのです。そして「ありがとう。あなたの言葉はいつも私を元気にしてくれる」と言ってくれました。
その日、私は言葉が人に与える力を体感しました。そして生涯、言葉で誰かの役に立とうと誓ったのでした。冒頭の言葉だけでは意味が伝わりませんが、私にとって忘れられないコピーなのです。
もうすぐ夏が来る…この時期になると、いつもあの日のことを想い出します。(あづさ)
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