「飢えや渇きは薬では治せない。」

このコーナーでは、株式会社ラクパのライター・城戸あづさが、心に留めておきたい言葉とのエピソードを綴ります。

花

「飢えや渇きは薬では治せない。」

ペシャワール会 中村哲

昔、ペシャワール会の活動を紹介させていただいたことがあります。医師として赴いたアフガニスタンで、人々に本当に必要なのは清潔な水と食べ物だと知り、現地の灌漑事業に尽力されてきた中村哲先生。心からご冥福をお祈り致します。

中村先生の言葉には「誰かの力になりたい時は、その人に今一番必要なものは何かを考えろ」という思いが込められています。私にそのことを教えてくれたのは、コロッケおばちゃんでした。母の義姉で、訪ねる度にコロッケやらぼた餅やら美味しい手料理を振る舞ってくれるので、うちの子たちがコロッケおばちゃんと名付けたのでした。

15年前の12月、父が亡くなりました。いざ遺族になると、落ち着いて泣く暇もありません。私は気が張って、葬儀の段取りばかり考えていました。

コロッケおばちゃんは通夜に重箱を抱えてやってきました。「食事を作る暇もないだろうから」と。おにぎりと味のしみた煮しめが詰まっていました。そして黒のストッキングで廊下を行き来する私を見て「今日は冷えるから、重ねて履いて」と黒の靴下を手渡してくれました。ジンジンしていた足先が温まると、心までホッとして涙がポロポロ出たのでした。

おばちゃんはもういませんが、私の元にはあの日の靴下と大切な教訓が遺っています。(あづさ)

この記事を書いた人
Azusa

株式会社ラクパ専属ライター。タウン誌≪シティ情報ふくおか≫編集者として、特集のほか、地元のテレビ番組・お笑い・祭りのページなどを担当。地域色豊かな誌面作りを目指す。2006年、ニュースレター作成代行「ラクパ」のライターとして活動開始。クライアントの個性を活かし、顧客づくりのための原稿を執筆中。趣味は競泳、専門種目はクロール。マスターズ大会での自己ベスト更新を夢見て、仕事と家事の合間にトレーニングに励む毎日。

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