このコーナーでは、株式会社ラクパのライター・城戸あづさが、心に留めておきたい言葉とのエピソードを綴ります。
「積極的な受け身。」
───大西寿男(校正者)
1月にNHK『プロフェッショナル仕事の流儀』で紹介された大西寿男(としお)さんは、出版業界で絶大な信頼を得ている、フリーランスの校正者。多くの作家や編集者が頼る存在なのに、彼曰く「校正は、放っておくとすぐに虚しくなっちゃう仕事」。間違いを見つけて当たり前、見落とせば叱られる、自分の努力が評価されることのない仕事、だと。
校正の仕事が軽視され、うつやパニック障害も患った彼が、今は全身全霊で校正に取り組んでいる姿に、ある覚悟を感じました。それが「積極的な受け身」です。
大西さんの校正は、誤字脱字の修正や事実確認に留まらず、表現の提案にまで踏み込みます。作者が本当に言いたかったことを見つける作業です。
それはニュースレターの執筆にも似ています。クライアントの思いを汲んで、会社の魅力や商品の価値が読み手の印象に残るよう、常に考えます。今までで一番嬉しかったクライアントの言葉は「僕より、僕のことをわかってくれてる」…究極の黒子も悪くない、と思えた出来事でした。
「与えられた受け身ではなく、自分で選びとった受け身だからこそ、役に立てることがある」という大西さんの言葉に、背中を押してもらえたような気がしました。(あづさ)
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