このコーナーでは、株式会社ラクパのライター・城戸あづさが、心に留めておきたい言葉とのエピソードを綴ります。
「食べるというのは、生きるということですからね。」
映画「ふたりの旅路」より
緊急事態宣言で生活が一変して1カ月が経ちました。最初の頃は神経質に掃除ばかりしていたけど、だんだん読書をしたり映画を観たりする余裕も出てきました。で、最近観た映画の中で最も心に響いたのが、桃井かおり主演の『ふたりの旅路』。
阪神淡路大震災でご主人も夫婦の夢だった洋食店も失った女性が、時を経て、旅行先のラトビアで料理番組に出ることになり…彼女の口から出たのは、震災直後に涙も出ず、何も感じられなくなった時のこと。
一緒に死んだほうがずっと良かったって本気で思ったんです。その時、ボランティアの方がおにぎりを下さって。ほんとにおにぎりが美味しくてね。何も感じられなかったのに?美味しい?って味覚だけが私に残っていたんですね。…それから私は毎日毎食、ささやかでもいいから、美味しいものを食べようと思って。一生懸命美味しいものを食べて、この20数年を生きてこれました。
料理が上手いとか、手間暇かけたとかではなくて、食事を大切にする気持ちの話です。作るのも食べるのも楽しんで、心と身体に栄養を。そう思うと、食事の支度が日々の愉しみになってきました。毎日美味しく食べる…自粛生活のおかげで、原点に帰れた気がします。(あづさ)
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