
ドラマで主人公が理不尽な扱いを受けた時、相手に報復する筋書きをつい考えてしまう。そして敵にとどめを刺すセリフを考えつくと、決まって祖母の言葉が頭に浮かぶ。
私は今で言う不登園児で、6歳になるまで日中を祖母と過ごした。祖母の口癖は「お前は私に似て性根が悪いから、人と喧嘩してはならん。相手の息の根を止めるから」だった。幼いなりに「性根が悪い」は褒め言葉ではないと察したが、「私に似て」が気に入っていた。
祖母は神経質だった私を案じて、好物ばかり食べさせ、毎日のんびり過ごさせた。おかげで小学校入学時には、私は人一倍体格の良い、空想癖のある子になっていた。
祖母は庭先で花を育てていたが、ある時、家から一段低い土地に狭い畑を設けた。そこで私の好きなスイカを育てると言う。園芸に詳しかった祖父は反対し、農家の知人も「素人には無理だ」と言ったが、祖母は聞く耳を持たなかった。
夏が来て、祖母はスイカが実った畑を見下ろし「見てみぃ。わっきゃない(=容易いもんだ)」と勝どきを上げた。そして「あっちゃん、スイカ切ってみろう」と私を従え、畑へ乗り込んだ。腰の曲がりかけた老女と丸々と太った幼女がスイカを抱えて小躍りする様は、傍から見て、さぞ滑稽だったろう。
まな板に乗せたスイカに包丁を入れると、パシッと音がした。祖母が眼で合図し、興奮した私は「ヤー!」と叫んだ。包丁が振り下ろされ、勢い良く転がったスイカの断面は…黄色だった。
間抜けな沈黙の後、祖母の「ありゃ…」を皮切りに、私たちは笑い転げた。理由はよくわからないが、涙が出るほど可笑しかったのである。
夏の夕暮れ、ふと祖母の黄色いスイカを思い出す。不味いと笑いながら、2人だけで食べたスイカだ。幼児教育は受けなかったが、祖母と過ごした日々が私の土台を築いてくれた。性根の悪さを露呈せぬよう、人とは争わないこと。少々の試練や失敗があっても、毎日愉快に暮らすこと。還暦を前にした今も、私の核は変わらない。



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