仕事などでお会いする方に、私が以前、福岡のタウン情報誌に勤務していたことを話すと、“雑誌が休刊になったのは、やっぱりK社(東京の大手出版社)が福岡に進出したからですか?”と聞かれることがある。
もちろんそれも理由の1つだとは思うが、実際には、もっと根っこの部分に原因があったと思う。ひとことで言うと、世の人々、特にタウン情報誌の読者層となる人たちの価値観が変わり、「お金を払って情報を得る」という考え方から、「情報は無料」という考え方にシフトしてきた時代の潮流に対応できなかったからではないか。
「この世に生き残る生き物は、最も力の強いものか。そうではない。最も頭のいいものか。そうでもない。それは、変化に対応できる生き物だ」とよく言われるが、企業もまさにそう。
で、雑誌はどうやって生き残るのかを考えてみた。答えは2つ。
1)「情報は無料」の考え方に沿ってフリーペーパー化する。広告収入が基本。
2)より価値の高い情報を扱って「お金を払ってでも欲しい」雑誌にする。
のどちらか。これ自体は別段新しい考え方ではない。
(1)の戦略は大変な競争に巻き込まれる。現に福岡は日本でもっともフリーペーパーの激戦区と言われていて、新しいフリーペーパーが創刊しては休刊・廃刊の繰り返しになっている。資本力がない限り新規参入はやめたほうがいい。
(2)の有料雑誌として残るためには、やはり「より付加価値の高い情報」を発信して、お金を払ってでも欲しいものすることが要だし、そのためには、読者が何を求めているかを掴むこと(ニーズよりウォンツ)と、狙った読者像にピンポイントで訴求できる内容にすること(選択と集中)が大事なのだと思う。
…といったことを、今日の西日本新聞に掲載されていた、佐野眞一氏のインタビュー記事を読みながら考えてみた。
佐野さんの本『だれが「本」を殺すのか』を読んだのは、また雑誌編集者だった頃。出版業界がなぜ不況なのかを緻密な取材で浮き彫りにした内容で、かなりショックを受けたのを覚えている。
追伸
念のために書いておきますが、私が以前いた福岡のタウン情報誌は、経営会社は変わりましたが、今は月刊誌として復刊しております。復刊してすでに丸3年経ち、しっかり読者もついております。毎月25日に書店・コンビニで発売してますので買ってね!
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