このコーナーでは、株式会社ラクパのライター・城戸あづさが、心に留めておきたい言葉とのエピソードを綴ります。
「功名心が出てくると、絶対思い切ったことができない。」
─大林組 田辺潔さん
【功名】手柄を立てて、名誉を手に入れること。また、その手柄。
先日のNHK『新プロジェクトX』で、東京スカイツリーの建設に携わった人々が紹介されました。業界の誰もが尻込みした、世界一高い自立式電波塔の建設。田辺さんはその施工技術と計画を任された時、決意します。
「我々は組織人だから(自分の)先のことを考える。そういう功名心みたいなものが出てくると、絶対に思い切ったことができない。ただ純粋に?どうやったらできるだろう?だけを追い求めよう。」
手柄を求める心を捨てて仕事に徹すると決めたのは、田辺さんだけでなく、現場の職人たちも同じでした。プライドを捨て、ライバル会社の職人に技術を教わり、協力体制が出来上がっていきます。やがて、東日本大震災にも身を呈して塔の安全を守る、プロ集団へと成長しました。カリスマ鳶職人の森川哲治さんは当時を「関わる人たちの気持ちのレベルが高かった」と振り返ります。スカイツリーの完成は「良いものを造りたい」という思いで繋がった、皆の功績なのですね。
我が家の息子2人も社会人になり、組織の中で鍛えられている様子。自分の手柄を求めるより、純粋に仕事に徹してほしいと願っています。自分が納得できた仕事より嬉しいものはないと思うから。
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