このコーナーでは、株式会社ラクパのライター・城戸あづさが、心に留めておきたい言葉とのエピソードを綴ります。
「一番大事にしてるのは、誰も炎上させないこと。」
───博多大吉
昨年末に放送されたNHK『笑いの正体』は「ツッコミ」について考える回でした。
80年代に起きた漫才ブームは、たけしや紳助のようなボケ芸人を人気者にし、ツッコミ芸人は生き残れない説が浸透しました。しかし40年経った今、ツッコミ芸人は様々な役割で活躍しています。
その一つがひな壇で、MCに、ゲストに、観客にと自在にツッコんで番組を盛り上げます。もう一つはMCで、MC常連の後藤輝基は「僕はリズムメーカー。番組の流れを大事にして、面白くならない時はツッコむ」と。ツッコミ芸人の能力の高さに感心するばかりでした。
ただ、博多大吉のMC術は少し違いました。「ツッこんでやろうと思って話を聞くと、相手の小さな失言を聞き逃すんです。せっかく来てくれたゲストを炎上させるのは申し訳ない。だから、とにかく相手の話をよく聞いて、少しでも誤解されそうな発言はフォローする。今はそれが一番大事」。
芸人MCが群雄割拠の時代に、自分の評価より、ゲストを気遣う姿勢に心が温まりました。私がタウン誌編集者だった頃、よく一緒に仕事をさせていただいた華丸大吉さん。この人柄で生き残ったのだなぁ、と。
仕事に欲は必要だけど、目の前の相手を大切に、一つ一つ丁寧にやっていこう。改めてそう思えた出来事でした。(あづさ)
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