このコーナーでは、株式会社ラクパのライター・城戸あづさが、心に留めておきたい言葉とのエピソードを綴ります。
一流は相手ファースト。
─井上裕之
人工股関節の手術と入院生活を経て、無事に帰ってまいりました。冒頭の言葉は、入院中に読んだ井上裕之さんの『一流の人間力』の一文です。
私が入院した大学病院の整形外科病棟は常に満床で、看護師は日勤と夜勤で対応し、医師・理学療法士・薬剤師とネット上で患者の状態を共有します。廊下や病室でパソコン入力する看護師の姿は新鮮で、凄まじい速さのタイピング音が彼女たちの忙しさを物語っていました。
しかし、彼女たちは患者とはゆっくり会話し、よく笑います。ダイビングが趣味の患者には海中の様子を聞き、飼い猫を恋しがる患者にはお勧めの猫動画を教え…カーテン越しに聞こえる会話に「忙しいのに、よく付き合うなぁ」と感心したものです。
これは心理学でペーシングと呼ばれ、相手と共通の話題で、話す速さや声の大きさを合わせることで、短い間に信頼関係を築くのだとか。その効果を驚くほど実感しました。
そういう訓練を受けているから、と言われればそれまでですが、彼女たちの声掛けや気遣いに、私もどれほど助けられたか。図々しくも歩く姿の撮影を頼むと、快く応じてくれ、私のわずか数メートルの歩行を本当に喜んでくれました。本心でなければ、あの笑顔はできません。
相手ファーストのプロを観察した3週間。身体だけでなく、心も治療してもらったような貴重な日々でした。(あづさ)
入院中は皆様からの応援メッセージに本当に励まされました。心よりお礼申し上げます。
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